米大統領選で民主党のバイデン候補が事実上勝利したというニュースが流れた際、ほっとした気持ちになった。
トランプ大統領の下品な言動には辟易していたし、平気で嘘をつく姿には失望とやりきれなさを覚えるだけであった。イラン核合意やパリ協定からの離脱、WHO(世界保健機関)からの脱退など、アメリカ第一主義で世界のルールを壊すやり方にも我慢がならなかった。アメリカさえ良ければ、否、自分さえ良ければ世界はどうなっても良いというのがトランプ流だった。
このトランプ流には、世界中が心身ともに疲れ果てたのではないか。
米国内での分断も拡大した。経済格差は拡大し、警官による黒人暴行死を契機に、アメリカ社会の病理である人種差別への怒りも噴き出した。そして新型コロナウイルスである。当初、トランプ氏は「アメリカでは完全にコントロールされている」などと虚言を振りまいていた。信じたのはトランプ信者くらいのものだろう。よくわからないウイルスをコントロールできるわけがない。
だが結果は、世界最多の感染者と死者を出し続けている。ワクチンや治療薬でも根拠ない楽観論を振りまいてきた。これによって多くの人々が仕事を失った。普通の国なら、この大失敗だけでも選挙に出馬することすらできなかっただろう。
自国の選挙制度を信用できない大統領
トランプ氏は、今回の選挙でも、選挙結果が出る前に「我々は勝った」と一方的な勝利宣言を行った。その一方で、何の根拠も示さずに、「不正があった」「選挙が盗まれた」などと言って法廷闘争に持ち込んでいる。ミシガン州では、トランプ支持者が「トランプ氏が大きくリードしていたのに、まるで魔法のように、バイデン氏の票が深夜に何千票も投下された」と主張している。
「アホか」としか言いようがない。魔法ではなくアメリカ国民の明確な意思表示だ。
郵便投票も立派な一票だ。トランプ氏は郵便投票を批判しているが、これは法律で認められた投票方法である。コロナ禍で郵便投票が増えたのは、当然のことだった。トランプ氏支持者も郵便投票は行っている。ましてや開票を「止めろ」などというのは、国民の選挙権を奪う暴論である。法律で決められた選挙方法が、自分に不利だから認めないなどというのは、民主主義の基本を壊そうとするものである。
だが、何の証拠もない法廷闘争が勝てるわけがない。ジョージア州、アリゾナ州、ネバダ州では、不正の証拠を示せず、いずれも訴えを退けられている。当然だ。トランプ氏やトランプ陣営が言うように、郵便投票に大規模な不正があったとしたなら、トランプ陣営だって不正があったことになる。
現職大統領が、自国の選挙制度を信用できないのなら、選挙にそもそも出るべきではない。
政権委譲を拒否する異常
11月13日には、米国全50州での勝敗が判明した。バイデン氏が306人の選挙人を獲得し、トランプ氏の232人を大きく上回った。15日、トランプ氏はようやく負けだけは認めたものの、「彼が勝利したのは、選挙が不正だったからだ」と根拠も示さずにまだ不正選挙を主張している。これほど往生際の悪い男を見たことがない。本当にみっともない限りだ。
トランプ政権は、今なおバイデン氏への政権委譲を拒否している。トランプ氏に忠誠を尽くすポンペオ国務長官は、11月10日の記者会見で「トランプ政権の2期目へ円滑に移行する。私たちは準備ができている」と述べた。日本の菅義偉首相や各国首脳がバイデン氏に祝意を伝え、首脳会談の準備に入っている時に、まさに異常事態である。
だがそれでもトランプ氏を支持する米国民も少なくない。まだすべての州の票数が出そろっていないが、得票数はバイデン氏が7700万票を超え、トランプ氏も7200万票を超えている。真っ二つに割れているのだ。
2006年の大統領選挙でオバマ氏に敗北した共和党のジョン・マケイン氏は、選挙結果を潔く受け入れ、オバマ氏への祝福と協力と連帯を呼びかけた。名演説として、高く評価されている。こういう政治家が共和党にいないことも、事態を深刻化させている。
この時以上にアメリカの分断は深刻化している。バイデン氏は、勝利演説で「分断ではなく、統合を目指す大統領になる」「品位を回復する」と述べた。今のような異常事態と分断が続けば、アメリカは国内政治も、対外政策もさらに衰退するだろう。バイデン氏と民主党の力の見せ所だ。
トランプ氏に物言えぬ共和党議員
オバマ前大統領が、今の異常事態についてインタビューに答えていたが、印象的だったのは、今の共和党の幹部への失望であった。本来ならこの異常事態を共和党こそが正すべきなのだ。だがペンス副大統領からも何の発言も出てこない。ポンペオ氏に至っては、先に紹介した通りだ。
ブッシュ元大統領がバイデン氏に祝意を伝え、「今回の選挙は根本的に公正であり、結果は明白だ」と語った。だが、現職の共和党上院議員の多くが、トランプ氏と同様に不正があったと主張している。誰もトランプに進言できない。なぜこんなに弱腰なのか。
在米コンサルタントの渡邊裕子氏は、11月12日付朝日新聞で、「4年前の大統領選挙までは『トランプだけはあり得ない』と批判していたのに、この4年間トランプ氏の目的達成のため、『たいこ持ち』のように動いた共和党議員が多く、今回も再選されています。逆に、理念を大切にし、トランプ氏を批判していたマケイン氏のような共和党の政治家の多くは、亡くなったり、政界を引退したりしてしまいました」と語っている。
トランプ陣営は訴訟費用調達のため「トランプ選挙弁護基金」を立ち上げているが、この資金の4割は、共和党全国委員会に割り当てられる。トランプ氏は、負けたとはいえ、4年前よりも1000万票多い約7230万票を獲得した。共和党議員からすれば、“トランプにくっついていれば資金も票も手に入る”という目論見がある。このため批判を避けているということなのだろう。
どこまでも自分本位のトランプ氏
トランプ氏は、11月13日の記者発表で米製薬大手ファイザーが開発する新型コロナウイルスのワクチンについて「早ければ4月にも全国民に提供できるようになるだろう」と述べた。ただ、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が、トランプ政権が推奨するワクチンの安全性などに懸念を表明していることを踏まえ、「ニューヨーク州は除外する」と語った。
トランプ氏は米食品医薬品局(FDA)が早期に緊急使用許可を出すとの見通しを示した上で、政権としてワクチン開発を支援してきた実績を強調し、「ほかの政権であれば、開発に3~5年はかかっただろう」と成果を訴えた。
まだ開発の成功したわけでもないのに、いつものように“根拠なし”の発言である。トランプ氏の発言通りなら、とっくにワクチンも治療薬も開発が終わっていたはずだ。また他の政権であったなら、ここまで米国内での感染を拡大させなかったであろう。
ニューヨーク州のクオモ知事がワクチンの許認可プロセスが「政治化されている」と懸念を示し、「率直に言って、連邦政府の意見を信用するつもりはない」と述べたのも当然である。
ニューヨーク州は、多様な専門家からなる諮問委員会を設置し、安全性を評価。その結果を踏まえて住民に助言を行う。ワクチンが必要な人に優先的に行き渡るよう、配布についても専門のチームを設置して対応する、としている。
クオモ知事の方がはるかにまともである。トランプ氏は「アメリカ・ファースト」で国際関係も、民主主義も、人権も壊そうとしてきたように思えてならない。
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<このニュースへのネットの反応>
ようやく不正投票の捜査が決定したとこですよ?
公式にもまだ次期大統領は決定されておらず、GASも結果は出ていないと政権移行は認めていない状態でこの記事はいかがなものか?落選と決めつけるのは全ての結果が出た後じゃないかな
GASじゃないやGSAだ
なお現在暴力行為に及んでいるのはバイデン派
じゃあ自国中心主義で周囲と戦争しまくり経済的に相手を罠にはめたり勝手に領土宣言したりウイルス対策がいい加減だったり交代制だった首長が終身制になったりした 中 国 様 にも辟易してるんだろうな?あと「郵便投票に大規模な不正があったとしたなら、トランプ陣営だって不正があったことになる」物凄い理屈だな。今の仕組みで自民党が不正可能なら民主党も不正してた事になるよ?
一国の大統領が自国の杜撰な制度に物申す事は*げているらしい こいつ本当に元議員か?
人身売買と言う外道商売のバイデンを勝ちにするとか頭ウニなんてレベルじゃねーぞ
筆坂って反台湾派だったか?
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