いまだに猛威をふるっている新型コロナウイルス。
長期化する自粛要請が経済に影響を与え、新型コロナウイルス関連の倒産は全国で100件以上起こっており、その余波は不動産業界にもおよんでいます。
時期的に引っ越しシーズンも落ち着いている頃ですが、どのような事態になっているのでしょうか。今回、「ぶっちゃけすぎる不動産」として話題の結家不動産コンサルティング株式会社のエージェント・吉澤さんに話を聞きました。
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オンラインや電話対応に移行
まず結家不動産コンサルティングでは4月23日時点で、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、時差勤務の推奨、並びに在宅勤務を導入。打ち合わせも原則オンラインでやっているといいます。また接客も、対面ではなく、オンラインや電話で対応しているとのこと。
「お客様には、退去予告をしているか、していないかといった段階に応じて、お引越し時期の延期、内見せずに申込・郵送契約をするといった4段階の優先順位で、引っ越し時期について考えていただいています」
お客の希望で内見を行う場合も、従業員のみが現地へ向かい、動画内見・テレビ電話のみの内見もあるといい、また不動産契約を結ぶときに欠かせない重要事項説明書の読み合わせもオンラインにて行っているそう。
「物件を直接ご覧になりたいご事情があるお客様につきましては、マスクの着用をお願いしてます。スタッフもマスクの着用・ビニール手袋・アルコール消毒を必須にして、お客様との距離を2m程度を目安になるべく保つことで感染防止に努めています」
引越し時期の延期、ストップも
さらに新型コロナウイルスの影響について「内見がほとんどなくなりました」と語ります。
「必ず引越しをしなければならないお客様が、写真や動画だけでも申し込みをするというケースもありますが、リモートのため信頼が築きにくく距離が縮まらない状況です。
また引越し時期を延期したり、ストップするお客様も増えています。お問い合わせがあっても、(物件の仲介をする)大手不動産会社が管理業務のみ行って新規募集を一時ストップしているため、ご案内できる物件が一部のみという状況です。
契約が決まっても、クリーニング業者、リフォーム業者に影響が出て、契約開始日が後ろ倒しになることもあります。
ある入居者様からは家賃の支払い延期を求められたり、減額を求められることも起きています。企業の売上が立たないため、店舗や事務所の希望家賃が下がっていく傾向です」
引越しの依頼は例年の20~30%
その結果、当然ながら会社としての売上が前年に比べ、減少しています。そもそも引っ越し相談の数自体が減っているとも。
「お引越しの依頼も減っていて、感覚としては例年の20~30%に減っているのではないでしょうか。通常、4月は繁忙期を避けたカップルのお客様、配属先の決まった新入社員のお客様から依頼がありますが、今年はそういった依頼も来ておりません。
緊急のお引越し以外は今の時期を避けているという印象です。ただ、こちらとしても一人一人お客様の時間を長く取るようにしたり、売上としてはマイナスですが、時期を遅らせる提案をして“お客様ファースト”を意識するようにしています」
新型コロナウイルスでポジティブな影響も
しかし、新型コロナの影響はポジティブなものもあるようです。吉澤さんは「コロナをきっかけに、お客様に久しぶりのコミュニケーションを取れた」と言います。
「ご案内できる物件が減った一方で、申し込みが入るスピードが遅くなり、普段は空いていないような物件が空いていることもあります。また、普段忙しくて引越しを考えていないお客様(夫婦やカップルで話し合いの時間が持てるため)が具体的にアクションをしてくれています。
また弊社は紹介制であるがゆえにお客様との信頼関係が出来上がっているため、オンラインヒアリング、契約や動画内見などの感染対策に応じてくれたお客様が多かったのは嬉しかったです。業者間の距離感が縮まって、管理会社も優しくなった気がします」
シェアハウスからの転居者が増えている訳
また、意外なところでは「シェアハウスからの転居者が増えている」そうです。
「シェアハウスや友人とのルームシェアからお引越しをご希望される方は一定数いらっしゃいます。自分以外の人と密室での生活をするため、感染を恐れてという理由がほとんどです。引越しを選択するのではなく、落ち着くまで実家に戻る方もいらっしゃいます。シェアハウスではないですが、医療関係者が2世帯住宅からお引越しをご依頼頂いたケースもあります」
帰省した実家でコロナが感染する恐れがありますし、シェアハウス住人としても苦しい選択なのでしょう。吉澤さんは今後の見通しをこう語ります。
「コロナの影響でお引越し自体を延期されている方もいらっしゃいますが、中には『転職をして社宅を退去しなければならない』『更新時に家賃増額をする物件に住んでいる』などで必ず引っ越さなければならない方もいらっしゃいます。
そういった方のご依頼は時間が経つにつれて、増えてくるのではと考えております。実際に4月時点でも件数は減りましたが、引越しのご依頼をいただくことはあります。入社が遅れていた新入社員や、配属がこれから決まる新入社員のご依頼が、緊急事態宣言の解除後に一定数見込まれるのではないでしょうか」
投資用の問い合わせは変わらない
ここまで居住用の不動産について話してもらいましたが、投資用はどうでしょう。こちらも部屋を探しづらい状況が続くようですが、吉澤さんは「投資チームにも確認したところ、投資用を購入したいという方からの依頼は以前と変わらずいただいている」と言います。
「現在の地価およびマンションの価格は明らかにプチバブルであり、購入する時期としてはあまり良い時期ではないのは確かです。コロナショックにより、さらに値上がりすることは考えにくく、なるべく安い坪単価のものを買っていただけたら、将来の値下がり率が低く収まります。
そして、コロナショックにより、なんとなく『これから物件価格下がるんじゃないか。もう少し後に買ったほうが得なんじゃないか。だから今は買いは控えよう』ということを思っている方のほうが多いと思います。これが群集心理です」
この群集心理がマーケットを動かすため、実際に現場で買い控えは散見されるそうです。
6か月後には相場価格が下がっていく?
「その結果、売主に起こることはどういったことかというと、相場価格だけれども不動産が思ったように売れない時期が続き、10月頃になれば『あれおかしいな。売れないぞ。もう少し価格下げるしかないのか』という気持ちになってくる人が多いでしょう。仲介業者も、価格を下げる提案をするでしょう。
そうして価格が全体的に少しずつ落ちてくるのが、10月くらいかもしれません。そしてこの時、コロナが収束しているのか、まだ収束していないのかによって、そのあとも価格が下がっていくのか否かが変わると思います。収束していれば、価格下落は止まる可能性があります。逆に収束していなければ、価格はじわじわ下がっていくと思います」
今回の価格下落シナリオは「コロナショックがどれくらい続くか」によって左右されています。「そして最悪シナリオで、コロナ騒動が1年収束しない場合、1年から1.5年後に購入すると、今の相場より5~15%安く買える時は来ると思います」とのこと。
新型コロナの影響はいつ収束するかわかりません。しかし、将来の資産運用の観点から不動産投資の選択肢を考えている人はこのアドバイスを参考にしても良いかもしれません。今後不動産業界にコロナがどのような影響を与え、各企業がどうやってそれを乗り越えるか注目したいですね。
<取材・文/シルバー井荻>
【シルバー井荻】
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