『ケナは韓国が嫌いで』チャン・ゴンジェ監督の来⽇が決定!

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現代の韓国社会を舞台に、生まれ育った場所で生きづらさを感じる女性が人生を模索する姿を描いた、3月7日(金)公開となる『ケナは韓国が嫌いで』。この度、チャン・ゴンジェ監督の来日が決定しました。チャン監督は、公開初日3月7日(金)に来日し、東京、大阪、京都の全5館の舞台挨拶に登壇予定。
第28回釜山国際映画祭オープニング作品として話題を呼んだ本作は、小説「82年生まれ、キム・ジヨン」と同じ出版社から刊行されたベストセラー小説「韓国が嫌いで」を原作に、韓国の若者が直面する現実を映し出す。「第二のホン・サンス」「韓国の是枝裕和」と称され、映画『ひと夏のファンタジア』で知られるチャン・ゴンジェ監督。2015年に原作を読んだ監督自らが映画化を熱望し、9年の歳月をかけて本作を完成させた。
また、公開に先駆けて、先行試写イベントが2月19日(水)日比谷図書文化館 地下1階 日比谷コンベンションホール(大ホール)で行われた。映画上映後、現代韓国を専門に研究している聖学院大学政治経済学部教授の春木育美さんと、モデレーターとしてWill Labの小安美和さんが登壇し、トークイベントを開催。
まず、映画の感想を聞かれた春木さんは、「本作の原作である『韓国が嫌いで』は、2015年の発売当時韓国ですごく話題になった本です。今回の日本での公開まで約10年、とても楽しみにしていました。韓国の今の若者が抱く閉塞感、不安、苛立ち、映画のなかで韓国の構造的な問題がちりばめられている作品で、そこが興味深かったと思います」と答えた。
本作は、主演のコ・アソンが主人公の28歳ケナを演じる。地獄のような長時間通勤、恋人との不透明な未来、仲が良いけれど息が詰まるような家族との日々のなかで、“ここでは幸せになれないと”感じたケナは新しい人生を始めるため、すべてを手放し、ニュージーランドへ旅立つ。
なぜ、ケナは生まれ育った国をでて、ニュージーランドへ向かったのかという話になり、春木さんは日本人が想像する以上に韓国が階層社会であることを解説。「原作の発売当時、『ヘル・朝鮮』『スプーン階級論」という言葉が話題になっていました。韓国は非常に階層社会で、身分が固定化している社会ではないかと若者が訴えていたのです。親の階層によって、進学、就学、結婚が思ったようにできない。生まれながらに、金のスプーン、泥のスプーンを持ってきた、などの表現がありました。ケナは韓国人から見たら恵まれていると思います。貯金が300万あり、奨学金も返済している。そして、大企業に勤めている。しかし、ケナの家族は貧しい、労働者階級です。ケナが、大学時代から長く付き合っている裕福な家庭出身の恋人の家族と食事をするシーンで、互いの家族の階層が違うとことを感じさせる描写が会話の中で続いています。そして、ケナが結婚してもずっと序列をつけられていくことを感じさせます」。

戒厳令、大統領弾劾裁判で注目を集める韓国社会について春木さんは、「原作がベストセラーとなり話題となってから今年で10年。韓国社会はどのように変わったのかというと、就職難は依然として解決されていないですし、若者たちには息苦しさがあります。それは社会的な構造の問題を変えないと解決しないのに、『分極化」と言われる政治家がジェンダー対立を煽って、政治的に利用しているのです。兵役がある男性は女性より不利だ、女性に追い抜かれてしまう、といって女性優遇策を廃止して男性の支持を集めて当選したのが尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領です。一方、女性は保守政党には希望が持てないと、進歩政党に希望を託したのですが、大きな変化はなかったです」と語る。
これからの韓国と日本については、「韓国と日本は非常に似ているところがある。日本が選ばなかった未来や過去が、韓国にある、パラレルワールドのように思います。韓国の変化のスピードは日本より速い。お互いの政策を参照しながら、進んでいくといいと思います。互いに解決の道筋を学ぶことができると思います」と語った。
「成功のモデルはひとつではない。どこにもパラダイスはないという事を描きながらも、しないよりは、行動して後悔したほうがいいという映画のメッセージがよかったと思います」と映画の魅力を語り、トークイベントを締めくくった。
イベント終了後、SNSでは「日本社会にも通じる」「若い人に見てほしい」「ケナの気持ちが痛いほどわかる」と共感の声が多数。見るものの共感を呼ぶ、映画『ケナは韓国が嫌いで』は、3月7日(金)全国公開。

 

 

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