<チョ・ヒョンチョル監督トークレポート>
「日本の方々が映画をどう受け止めたのか、それが気になります」
『君と私』公開の前日、11月13日に渋谷ホワイトシネクイントにて、韓国からチョ・ヒョンチョル監督をゲストに、西森路代を司会に迎えて、トーク付きプレミア上映が開催された。上映後、大きな拍手に迎えられたチョ監督は感激した様子で「皆さまこんにちは。『君と私』を演出しました、韓国で俳優としても活動していますチョ・ヒョンチョルと申します。お目にかかれてうれしく思います」とあいさつ。
初監督を日本で公開したチョ監督は、海外で舞台挨拶を行うこともはじめてだとのことで、「この映画は当初、韓国の観客を念頭に置いてつくったものなので、海外の方々がこの映画をどのように観てくださるか、本当に気になっていました」とコメント。
本作が、韓国で2014年4月16日に発生し、修学旅行中の高校生ら、多くの犠牲者を出したセウォル号沈没事故を題材に、二人の女子高生の揺れ動く心情を繊細に描いた物語であることに、期待と不安が入り交じった表情のチョ監督。「韓国の方々は、セウォル号という共通のトラウマを抱えているので、映画を通してそれを記憶し、コミュニケーションをとることができます。ですから日本の方々が果たしてこの映画をどのように受け止めたのか。それが気になりますし、心配でもあります」。
Netflixオリジナルシリーズ「D.P. -脱走兵追跡官-」をはじめ、名バイプレーヤーとして活躍してきたチョ監督は、俳優業と並行して監督としてのキャリアを築いてきた。そんなチョ監督がなぜこの題材を選んだのだろうか。「セウォル号の事故が起きた2014年当時、恥ずかしながら、わたしにとっては少し他人事のように感じられていました。しかし、その2年後の2016年に個人的な経験を経て、人生や死に対する見方が大きく変わりました。その経験を経て、自分のまわりのことだけでなく、社会で起きた悲劇的な死にも目を向けるようになりました」と自身の死生観の変化を語ったチョ監督。その過程でたどり着いた思いとして「わたしが切実に感じた事実は『わたしたちは誰もがいつか死ぬ』という、とてもシンプルで当たり前の事実でした。それがこの映画をつくろうと思ったきっかけになりました」と振り返る。
本作の脚本執筆には7年もの歳月を費やした。「わたしがこの脚本を書いている時には、チョ・ヒョンチョルという個人が新たな物語を創作するというよりも、すでに身の回りにある風景や会話、物語のかけらを、わたしという人間を通して消化させ、集めていくという感覚でした。だからわたしが書いたというよりは、どんなものがあるのか、ひたすら“観察をして採集した”という方が近いかもしれません」。
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