NBAバレエ団は、6月7日(土)・8日(日)に、新国立劇場中劇場にて、『海賊』を上演する。新たな楽曲と剣技を取り入れた振付、ドラマティックな演技が織りなす、これまでにない『海賊』に出会えそうだ。
久保綋一版『海賊』が進化
コンラッド：宮内浩之 6月8日(日)公演出演
2018年に初演し人気を博した、久保綋一版『海賊』。このたび、作曲家・新垣隆氏に追加楽曲の制作を依頼し、ジョージ・バイロンによる物語詩『The Corsair(コルセア)』に基づいて、新たにドラマティックなストーリー展開を加えるなど、新たな試みを行った。
バレエ版『海賊』は、19世紀に数々の改変を経て上演されてきたが、NBAバレエ団はこのバイロンの詩の持つ「冒険心、ロマンス、葛藤」のドラマ性をより色濃く舞台に反映させている。
バイロンの詩は、単なる英雄譚ではなく、海賊たちの生き様を詩的かつリアルに描いている。彼の描く主人公コンラッドは、荒々しくも気高く、正義と野心の間で揺れる複雑なキャラクターだ。NBAバレエ団の『海賊』では、 コンラッドの内面の葛藤にも焦点を当て、バレエの表現力を最大限に活かした心理描写を加えた。
また、従来の『海賊』では恋愛要素が強調されることが多いが、久保綋一版では、自由を求める魂の叫び、男たちの誇り、海賊団の結束など、バイロンの詩が持つ壮大なスケール感を舞台で体現。
単なるバレエ作品ではなく、まるで一冊の壮大な叙事詩を読んでいるかのような感覚に引き込まれる、従来の『海賊』とは一線を画す演出に仕上がっている。
ドラマ性を高める劇伴音楽
日本を代表する作曲家・新垣隆氏が新たに書き下ろした劇伴音楽にも注目だ。
新垣氏は、クラシック音楽から現代音楽まで幅広い分野で活躍し、情感豊かで構築力のある作品を手掛けてきた。
今回の『海賊』では、バレエの躍動感をより引き立てるリズムや、登場人物の心情をより深く描くメロディラインを取り入れ、従来の『海賊』とは一線を画す新たな魅力を加えて、従来のクラシックバレエの枠を超え、物語のドラマ性を高めるための新たな音楽を生み出している。
ダンサーたちの動きをよりダイナミックにし、観客の感情を揺さぶる「物語のもうひとつの主役」となる音の世界を感じられるはず。
リアルな剣術アクションも！
パシャ・ザイード：刑部星矢 6月7日(土)14時公演出演
戦闘シーンの振付を担当するのは、国内外で活躍するファイトディレクター・新美智士氏。数々の映画、舞台、アクション作品に携わり、リアルで迫力のある剣術演出を創り上げてきた第一人者だ。
同氏が生み出すリアルな剣術も見どころのひとつ。従来のクラシックバレエでは見られない、本格的な剣術アクションが導入されており、ダンサーたちは剣術の基礎から徹底的に鍛えられ、剣の使い方から倒れ方まで、細部にわたりリアリティのある鋭くダイナミックな剣さばきを両立させている。
今回の『海賊』では自由を求める海賊たちと、それを阻む敵との戦いが、バレエならではの優雅で洗練された動きとアクションを融合させた新たな形で表現。
よりリアルで迫力あるシーンが繰り広げられ、そのスピーディーで息をつかせぬ展開とリアリティで、まるで映画を観ているような興奮と充足感を味わえる。
現代的な感性を取り入れた独自の振り付け
同公演の振付を手掛けるのは、ダンサー・振付家として国内外で活躍する宝満直也氏。宝満氏は、クラシックバレエの伝統を尊重しつつ、現代的な感性を取り入れた独自の振付スタイルで知られる。
今回の演目では、物語の深層に迫るドラマティックな演出と、観客を魅了するダイナミックなダンスシーンを融合させ、新たな解釈を加えた。
ギュルナーレ：渡辺栞菜6月8日(日)公演メドーラ役で出演
ダンサーたちの個性や技術を最大限に引き出すことで、舞台上に生き生きとしたキャラクターを創り上げ、登場人物の感情や物語の背景を緻密に表現している。
進化し続ける『海賊』を、会場で体感しよう。
■『海賊』公演概要
日時：6月7日(土) 開演14:00(開場13:30)／開演18:00(開場17:30) 、6月8日(日) 開演16:00(開場15:30)
会場：新国立劇場中劇場(東京都渋谷区本町1-1-1)
料金：S席9,900円、車いすS席5,000円、障がい者S席7,900円、学生席(25歳以下)2,000円(すべて税込)
公演情報：https://nbaballet.org/official/thecorsair2025
(鈴木 京)
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