【ネタバレ全開】
作品に込められたメッセージの奥底に迫る!ここでしか見られない!貴重な言葉の数々!
『ミッキー17』のポン・ジュノ × 『せかいのおきく』の阪本順治 出会いから25年、再会した2大監督の特別対談映像&対談全文解禁!
今回、『ミッキー17』で来日したポン・ジュノ監督と阪本順治監督が、昨年3月以来一年振りに再会を果たした。
ポン監督の集大成となる『ミッキー17』を観たばかりの阪本監督の鋭い指摘に、ポン監督はどんな答で応じるのか。
出会いから25年、強い絆で結ばれた両監督の特別対談映像をお届け! 今回は対談全文もご紹介します。
ポン・ジュノ監督と阪本順治監督、2人の出会いは2000年。第48回サン・セバスチャン国際映画祭コンペ部門に『顔』で参加した阪本監督はポン監督の初長編『吠える犬は噛まない』を観て「これがデビュー作かよ、まいったな。オレは一から出直しだ!」とコメントを寄せた。
それから約25年、映画を作り続ける2人は兄弟のような関係で結ばれている。ポン・ジュノ監督の最新作『ミッキー17』を「絵本のような映画」だと語る阪本監督は、ポン監督について「普段は非常に賑やかでユーモラスな人なのですが、実は自分がやりたいことを徹底してやるために自分を追い込んでいくというか、その葛藤の抱え方というか。時には自分を傷つけるくらいに背負ってしまうという一面も知っているので。観終わって楽しかった一方で、どれだけの苦労をしたのかと思うと、親心じゃないけれど…、ちょっと泣けてきちゃった」と家族のような気持ちでエンドロールを見つめていたという。
ポン・ジュノ監督 × 阪本順治監督 特別対談映像ダイジェスト
「こうしてまた再会できて本当に嬉しいです。私は作品が日本で公開されるたびに、お兄さんが私の新作をどんなふうに観てくれるのかと想像しながら緊張もしているんです。キンチョー(緊張)です」とポン・ジュノ監督が笑顔を見せる。「同じことを返します」と応じた阪本順治監督は「僕の映画を観て、時には長文で感想を送ってくれたりして。物語を深く読んでもらえるところ、そして日本の監督と違い別の視点から観てもらえることは嬉しいなと思っています」と日々のやりとりに感謝を述べる。
リラックスした雰囲気で始まった対談は、「ポン監督の視点はいつも社会的地位のない名もなき人を主人公にして、けれどもめげずに生きていく、そういう骨子は何も変わらないと思いました。退廃した世界で何度も死んでは生き返るという運命を背負った主人公を軽妙にかわいらしいタッチで描いた、絵本のような映画だったなと思います」と、阪本監督はポン監督の一貫したテーマを受け止めた。続けて、ミッキーが乗り込む宇宙船の美術や造形、劇中に登場するクリーパーの姿を意識しながら、「日本人は『ミッキー17』を一番楽しめる国民性を持っていると思っていて、韓国でヒットしているのは聞いていますが、やはり日本人に非常にふさわしい娯楽映画だと思います。なぜかというと僕らは小さいころから漫画などたくさんのフィクションに馴染んできています。手塚治虫、大友克洋、つげ義春、藤子不二雄。アンダーグラウンドからメジャーのおとぎ話に馴染んできた僕らだからこそ、この映画は非常に日本人に向いているのではないかと思っています」と指摘、幼い頃から日本のアニメや漫画で育ったというポン監督が大きくうなずく。
『ミッキー17』に大きな刺激を受けたという阪本監督は、「近未来においてクローンを作ることは倫理的に許されない。でもミッキーは、宇宙の危ない仕事に従事するたった1人だったらいいんじゃないか、…という判断のもとに生まれたキャラクターですよね?そう考えるとゾッとするのは、たった1人ならいいんじゃないかと皆が思ってしまったということ。だから「死ぬってどんな気分?」と聞いてくる。誰かが犠牲になるしかないのだから仕方がないというようなものの考え方は、昨今と地続きだと思っています。面白おかしくだけど、そういうことも描いていたのだなと思いました」と、ポン監督が描いたテーマの核心に迫る。
阪本監督の鋭い指摘に「私もそれは重要に考えていた部分です」と頬をさすったポン監督は、「共同体のすべての人たちが危険で汚くて死ななければならない仕事を1人に押し付ける。『君は死んでも仕方がない、契約書にサインをしたのだから』『それが君の仕事なのだから』と、自分たちの責任や自責の念から逃れようとします」と、契約書を楯に理不尽な任務をミッキーに押しつける権力者たちの姿を描いたという。続けて、「反対にクリーパー(作品に登場するクリーチャー)たちは、彼らの子供1匹が死に面したとき、その1匹を助けるために共同体全体が動き雪原に飛び出してきます」と手振りを交えて熱く語る監督は、「2つの世界を対比させたかった。繰り返し1人の人間を犠牲に死なせて自分たちは安全な場所にいる人間の世界と、1匹を助けようとするクリーパーたちの姿を対比させながら、どちらが他者に対するリスペクトを持つ高貴な存在なのかというのを見せたかったんです」と、愚かな指導者と崇高な精神と知性を持ったクリーパーとの対比に特別な演出意図を込めたことを明かしている。
阪本監督は「ポン監督の映画の特徴は善悪を単純化しないことや、名もなき人を主人公に置くこと」とその魅力を熱弁。さらに、「今回も非常に楽しんで観たけれど終わってから受け取るものは本当の意味でのハッピーエンドではなかったと思いますし考えさせられる読後感は変わらないと感じました」と、ポン監督が描き続けてきたテーマにブレはないと指摘する。その言葉を受けたポン監督は、「ミッキーはずっと死を繰り返し、死ぬことが職業でした。悲劇といえば主人公が死ぬことだと思いますが、死なせて終わることにあまり意味がないように思えました。それに彼は善良な青年なので、そんな彼が破壊されるところも見たくなかった。本作の結末ではそういう意味を持たせたかったのです」と、『ミッキー17』が訴えかける「生きることの意味」について言及し対談を結んだ。その後2人は固い握手を交わした。
ポン・ジュノ監督が兄と慕う阪本順治監督の映画愛に溢れた問いかけが、『ミッキー17』に込められた様々な想いを紐解いていく。今回解禁された特別対談映像と対談全文は、既に鑑賞された方はもちろん、これから『ミッキー17』を観ようと思っている方にも必見の内容となっている。
人生失敗だらけのミッキーが手に入れたのは、何度でも生まれ変われる夢の仕事、のはずが…それは身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった!一発逆転のはずが、ブラック企業の“使い捨て”ワーカーとなってしまったミッキーには、地獄のような日々が待っていた。ブラック企業のどん底で搾取され続けて17号となったミッキーの前に、ある日、手違いで自分のコピーである18号が現れ、事態は一変。
マイルドな17号と辛辣な18号、2人になったミッキーは権力者たちへの逆襲を開始する。ターゲットは自分の得しか考えていない強欲なボス、マーシャル(マーク・ラファロ)と現場に“死にゲー”任務を強いる、イルファ(トニ・コレット)だ。使い捨てワーカー vs強欲なブラック企業のトップ、逆襲エンターテイメントが開幕!
全世界を驚愕と熱狂の渦に叩き込んだポン・ジュノ監督が史上最大のスケールで贈る逆襲エンターテイメント『ミッキー17』
かつてない映画体験の幕開けを、劇場の大画面で満喫しよう!!
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