韓国映画初登場1位を記録し、19歳未満鑑賞禁止にもかかわらず観客動員数100万人を突破した“劇薬”サスペンス・スリラー映画『秘顔-ひがん-』が、6月20日(金)より日本で公開される。
愛と欲望、裏切りが交錯する密室心理劇で、オーケストラの指揮者という表の顔の裏に“もうひとつの顔”を隠した男ソンジンを演じたのは、実力派俳優ソン・スンホン。
日本でのファンミーティングのために来日していた彼にインタビューを敢行し、役作りの苦労や、現場での意外な一面、さらには“若さの秘訣”まで、飾らない素顔をたっぷり語ってもらった。
『情愛中毒』では完璧なエリート軍人・キム・ジンピョンを演じ、表向きの成功と内に秘めた情欲のはざまで揺れる男を体現したソン・スンホン。その役と、『秘顔-ひがん-』で演じた、欲望を秘めた指揮者・ソンジンとの違いについて、「両方のキャラクターに何かしらの欲望がある」と語る。
「『情愛中毒』のジンピョンは、階級のトップに昇進したいという野心を持つ兵士で、将軍の娘と結婚してエリート街道を歩んでいました。でも、本当に自分が求めていた恋に出会って、イム・ジヨンさん演じるチョン・ガフンに惹かれていくんです。今回の映画でも望んでいない婚約をしますが、婚約者の代理チェリストと恋に落ちてしまいます。『秘顔-ひがん-』のソンジンのほうが、ジンピョンよりも少し欲望にのめり込んでいる人物なんじゃないかと思います」。
いずれの役も、内面に抱えた欲望や人間の本能を描いたものだという。キム・デウ監督の作品には、人間の見えない部分、深層心理に迫るようなテーマが多いとも語った。
「ソンジンというキャラクターには哀れで同情できる部分もあります。映画では編集された場面もあって、彼の背景についてあまり説明されていないんですが、オーケストラの指揮者をしている裕福な家庭で育ったように見えて、実際は両親が食堂で働いていたような環境からスタートしている人なんです。裕福な妻と出会って、そこから指揮者にまで上り詰めた。周囲の目には、成功に目が眩んだ欲深い人に映るかもしれません。実際、婚約もそういった目的がありましたし。ただ、ソンジンなりの自尊心があって、そういった欲を表には出さない。疑い深い一面もあって、すごく現実的な人物のようにも感じます」。
実際に「彼のような人に実生活で会ったら、あまり好きになれないかもしれない(笑)」と冗談まじりに語りながらも、「でも哀れで、どこか同情できる」と語る。ソンジンは婚約者の代理チェリスト・ミジュと出会い、浮気という形で関係を持つが、それには彼自身の過去と、ミジュの抱える深い傷が関係している。
「ミジュもたくさんの心の傷を負った子で、ソンジンも彼女を通して同情し、共感したんです。ミジュも幼い頃に両親を亡くして、困難な状況の中でチェロリストになったという背景を知り、親近感を持ちました。だからこそ、自分の本音を打ち明けられるような相手に出会った感覚だったと思います。火花が散った、という感じです。愛と呼ぶにはちょっと違うかもしれませんが、お互いに傷を抱えていたからこそ、浮気という行動に至ってしまったんだと思います」。
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