青幻舎は、ジャーナリストのウィル・エルスワース=ジョーンズ著『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』2,970円(税込)を、8月下旬に刊行する。
同書は、謎多きストリートアーティスト・バンクシーが30年以上にわたるキャリアのなかで創造し、現在元の形で存在しない作品たちの運命を、詳細に掘り下げていく。
世界各地に30年にわたり作品を描く
故郷であるイギリス・ブリストルを中心に、世界各地に30年にわたり作品を描いてきたバンクシー。

1 Performing Monkeys Page 91 topImage credit: Trixie Delite

5024616650_c44a703bd9_o Page 57Image credit: Rob Corder
壁、ドア、歩道、車両など、多種多様な「キャンバス」に描いてきた作品は、一過性というストリートアートの特性に加え、その爆発的な人気ゆえ、今ではそのほとんどが描かれた場所から消え去っている。
なぜ作品は姿を消したのか

『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』中面
同書では、バンクシーの重要作品50点を中心に、なぜ、そしてどのようにして、姿を消したのか核心に迫る。
清掃員による徹底的な除去から、建造物の解体工事、アートディーラーによる「保護(保管・販売)」を目的とした撤去、他のグラフィティアーティストとの確執による上描き…。作品消滅の背景を、豊富な写真、具体的事例、関係者へのインタビューなどを通して明らかにする。
また、同書の翻訳監修は、バンクシーの活動を初期から注目し続け、『バンクシー アート・テロリスト』『覆面アーティスト バンクシーの正体』(監修)などの書籍を手がけてきた、毛利嘉孝氏(社会学者、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授)が務める。
『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』は、バンクシー芸術の本質、作品の金銭的価値、ストリートアート本来の一過性の性質について読者に問いかける、ありそうでなかったバンクシーのガイドブック的一冊となっている。
書籍の内容の一部を紹介しよう。
「消えるダイヤモンド」

『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』中面
「消えるダイヤモンド(The Disappearing Diamond)」。
アメリカ・デトロイトの荒廃した地域に描かれた《ダイヤモンド・ガール》。ファンが裕福な人に買われるのを防ぐため撤去しようと試みるも、最終的には誰かに持ち去られたのか、行方不明になっている。
「80万ポンドの馬小屋」

『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』中面
「80万ポンドの馬小屋(The £800,000 Stable)」。
イギリス・グレートヤーマスの模型村、メリベール・モデルビレッジにバンクシーがこっそり置いた馬小屋の模型は、コロナ禍で苦しむ村の観光客を50%増加させた。
しかし、毎晩馬小屋を隠さなければならない恐怖に怯えたオーナーは、オークションへ出品。80万ポンドで落札される。
「木の外科手術」

『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』中面
「木の外科手術(Tree Surgery)」。
ロンドンのホーンジー・ロードに描かれた、枯れ木の背景に緑のペンキで葉が描かれた作品。Googleマップにも掲載されるほど注目されていたが、過剰なアクリルガラスと保護壁によって、ほとんど見えなくなってしまっている皮肉な現状があった。
「沈みたくなければ泳ぐしかない」

『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』中面
「沈みたくなければ泳ぐしかない(Sink or Swim)」。
ヴェネチアの運河の岸壁に描かれた《移民の子ども》。運河の水位上昇と船の波の影響で徐々に消えつつある。
この作品を修復すべきか、それとも自然に消滅させるべきかという議論があった。地元の銀行によって保存の動きが出ていることが語られている。

ashley original picture Page 73Image credit: Ashely Ovenden
作品消失の経緯は実にさまざま。『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』は、謎めくバンクシーの作品について、より深く知ることができる興味深い一冊になりそうだ。
■『失われたバンクシー あの作品は、なぜ消えたのか』書誌情報
著者:ウィル・エルスワース=ジョーンズ
翻訳監修:毛利嘉孝
青幻舎HP:http://www.seigensha.com
(鈴木 京)
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