新宿・歌舞伎町のアートスペース「デカメロン」にて、9月5日(金)より、海野林太郎氏、王之玉氏、アレキサンダージュリアン氏による展覧会「スピリチュアル・フィクションズ(Spiritual Fictions)」が開催される。
海野林太郎(Rintaro Unno)
「BURN」2021
海野林太郎氏は1992年、東京都生まれ、美術家。
「マヌケだね 楽しい夜さ 好きだよ」2022
新興宗教やテレビゲーム、映画、無人航空機など、多様なモチーフを取り上げ、映像やインスタレーションを中心に制作を行っている。加えて、絵画、立体、テキストといった他のメディアによる表現も手がける。
「飛行日記」2023
近年は、「メディアと人間、社会と個人の関係を考察しながら、個人が信じるものや見えている世界をどのように描けるか」というテーマを軸に活動している。
王之玉(WangZhiyu)
「Gabriel ☿」2025
王之玉氏は、1999年中国黒龍江省生まれ、2017年来日。2022年に東京藝術大学美術学部油画専攻を卒業、2024年に同大学大学院美術研究科油画技法・材料研究室修士課程を修了。現在は博士課程に在籍している。
「Rebis」2021
「現代の錬金術師」を自称し、宗教、オカルティズム、自然科学、神話、旅の経験など多様な領域から着想を得て、錬金術的な発想を基盤に制作している。
オブジェ「家族写真」2023
両性具有の身体、天使、一角獣、イルカ、卵、ウロボロスなどの象徴的かつ物語性を持つモチーフを制作言語として用い、絵画、彫刻、インスタレーションなどのメディアを通じ、現代社会で失われつつある精神性や宗教性を宿す場と時間を提示する作品を国内外で発表している。
アレキサンダージュリアン(Alexander Jyulian)
「ていねいなキュウリ暮らし」2025
「衛星を追う」2024
鹿児島県立樹木女学院を首席で卒業した。
「聖☆ジュエル」2024
好きな飲み物はファイブミニ。
「スピリチュアル」と「フィクション」
展覧会「スピリチュアル・フィクションズ」では、映像、オブジェ、華道、文章、インスタレーションといった多様なメディアを横断しながら、スピリチュアルな想像力と現実との間に生じるズレや重なりに焦点を当てる。
プロジェクト名にある「スピリチュアル(spiritual)」は、一般的に「精神的なもの」や「目に見えない力」を指す言葉であり、魂や意識の深層、あるいは宗教的・非物質的な感性を内包している。
また、「SF」は本来サイエンス・フィクション(Science Fiction)を意味するが、ここでは「スピリチュアル・フィクションズ」として再解釈され、新たな想像力のかたちとして提示される。
現代において、スピリチュアルな言説はしばしば資本や政治と無自覚に結びつき、個々の現実感や判断力を奪う装置としても機能している。アーティストたちはそうした状況に対して強い危機意識を持ちながらも、スピリチュアルな想像力そのものを否定するのではなく、それを「現実を取り戻すための回路」として捉え直そうとしている。
日常に潜む違和感の瞬間や誤解、繰り返される言葉の空転など、作品には現実の裂け目から立ち上がる微細なエピソードが散りばめられている。これらは単なる記録ではなく、それぞれの現実から紡ぎ出された個別のフィクションであり、既存の枠組みに依存しない「見たことのない現実」の兆候として現れる。
フィクションは再接続の手段
以下は海野林太郎氏の文章。
「かつてサイエンス(科学)が、現実とフィクションをつなぐメディアとして機能したように、彼らは今、スピリチュアルな想像力を媒介として、精神と現実のあいだに新たな接点を見出そうとしています。フィクションとは逃避ではなく、再接続の手段であり、分断された現実をもう一度手繰り寄せるための試みです。
本展では、日常の断片から立ち上がる言語的・視覚的装置を通じて、3名のアーティストによる『スピリチュアル・フィクションズ』の実践を紹介します。既存の価値観や制度から距離をとりながら、新たな現実のあり方を探るその姿勢は、現代社会への批評性を帯びつつも、未来への希望を静かに照らし出します。ぜひご高覧ください。」
異なる背景と実践を持つ3名のアーティストがそれぞれの視点から「スピリチュアル」と「フィクション」という概念に向き合った表現を体感してみては。
■スピリチュアル・フィクションズ
会期：9月5日(金)～28日(日)
会場：デカメロン
住所：東京都新宿区歌舞伎町1丁目12-4
営業時間：20:00～27:00 ※13日のみ24:00まで
休廊日：月曜日
デカメロン公式サイト：https://decameron.jp
(佐藤 ひより)
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