茨城県つくば市の「筑波メディカルセンター病院」は、筑波大学 ADP(アート・デザインプロデュース)の学生チーム「パプリカ」と、病院のアート・デザインコーディネートを担う「チア・アート」と協働して、重症患者が入院する集中治療病棟(ICU)内の家族控室2部屋を改修。4年間に及ぶプロジェクトが、3月3日(月)より正式利用をスタートした。
重症患者の家族が使用する控室の問題
茨城県南地域の三次救急医療を担う「筑波メディカルセンター病院」の救命救急センターは、年間6,300件を超える救急搬送のほか、ドクターカーの運用、救急ヘリコプター搬送による重症患者受け入れを行っている。
ICU家族控室は、処置が終了するまでの間に家族が待機し、一日あたり最大10組が利用、長い時は8時間近く滞在する場合もある。患者家族は気が動転しているケースが多く、処置中は患者の状態が落ち着くまでは面会できないことから、不安と緊張が蓄積されていく場所となっている。

改修前の家族控室1
利用者からは、「照明が薄暗く、心身ともに窮屈でドアを解放したまま利用した」「落ち着かず頻繁に部屋を出入りしていた」などの声が寄せられ、深刻な状況下だからこそ、気持ちを落ち着かせる空間を望む声が上がっていた。また、開院当初からある棟に位置するICUは、老朽化に加え、職員からの「狭く圧迫感がある」などの声もあり、療養環境改善が長年の課題となっていた。
不安な気持ちを落ち着かせられる空間に
そこで、同院で2007年より行われている病院アート・デザイン活動の一環として、ICU家族控室の改修に取り組んだ。費用面では、2021年に実施した緩和ケア病棟家族控室改修のクラウドファンディングの余剰金を、本改修の一部に充て、「患者さんとご家族のための療養環境の改善」というプロジェクト当初の想いを継承しつつも、ICUという病棟の特性にも配慮した。
視覚的に印象に残りにくい配色、扉のない開放的な2部屋を設計し、シンプルながらも身体と心が休まり、不安な気持ちを落ち着かせられる空間に整備した。
「家族控室1」は、薄暗く古い印象の部屋から、長時間でも落ち着いて過ごせる優しい印象の部屋に改修。
「家族控室4」は、冷たい印象だった廊下にオープンな待合室を新設し、
気軽に利用できる空間に改修した。
利用開始にあたり、2月26日(水)~3月2日(日)の期間で職員向け内覧会を開催し、改修に至る背景や過程を学生とアートコーディネーターが、改修に直接携わらない職員へ説明をする機会を設け、好評を博した。今回の改修により、家族が抱える心身の負担軽減に繋がるなどの効果が期待されている。
クラファンの余剰金500万円を活用

改修された緩和ケア病棟の家族控室
筑波メディカルセンターでは、2021年7月~8月に「#病院にアートを 患者さんとご家族が笑顔になれる緩和ケア病棟へ」というプロジェクトでクラウドファンディングを実施。目標金額350万円に対し、439名より13,084,000円支援金を得た。
改修完了後に約500万円の余剰金が残り、使用用途を検討していく中で、救急病院として同院が抱える「救急患者と家族を受け入れる空間整備の必要性」という思いと重なり、支援者に様々な広報媒体で告知したのち、ICU家族控室の改修に充てることとした。

ICU家族控室完成をよろこぶ病院職員と学生、アートコーディネーター
「筑波メディカルセンター」は、今回の家族控室のみならず、今後も患者家族が落ち着いて過ごすことのできる療養環境の改善に努めていくという。
■筑波メディカルセンター病院
住所:茨城県つくば市天久保1丁目1−1
筑波メディカルセンター病院URL:https://www.tmch.or.jp
アート・デザインプロジェクト紹介ページ:https://www.tmch.or.jp/effort/art.html
家族控室改修動画URL:https://youtu.be/-7P541Rq7AE
(山本えり)