安井山 善行寺(やすいさん ぜんぎょうじ)では、新たな納骨堂「桜堂」の完成と同時に、お布施の一部を、地域課題を解決する活動に寄付する「社会還元型納骨堂」の制度を構築。5月より正式に運用を開始した。
「社会還元型納骨堂」の仕組み
昨今、持続可能な社会の実現、いわゆるSDGsが叫ばれているが、仏教はそれよりはるか以前から「共に生きる」「分かち合う」という教えを軸にしてきた。善行寺の「社会還元型納骨堂」の試みは、そうした仏教本来の精神を、いまの社会に通じる形にしたいという思いで開始された。
「社会還元型納骨堂」の制度では、「故人を偲ぶ心を社会に還元する」ことを目的に、納骨堂での弔いをきっかけに、寺院に納められるお布施を社会に還元することで、社会にひらく寺の制度となっている。
従来、寺院に納められたお布施の用途は寺院に委ねられている場合が多いが、同寺の「社会還元型納骨堂」の制度では、契約者のお布施の一部が、地域課題を解決する活動への寄付となることを予め明示。利用者と寺院が、共に社会への貢献内容を契約段階で確認・合意する、新しい納骨堂制度となっている。
寄付先は、自然環境保護団体や動物福祉団体、その他社会課題解決団体。寄付金の使途についての透明性を確保するため、公式ウェブサイトやSNSで寄付先やその活動を紹介し、毎年の寄付実績を報告する予定だ。これにより、支援の輪を広げることを目指している。
「桜堂」の弔いを社会に還す新たな仕組み
名古屋市は、全国の都市と比較すると緑被率が低い都市(約21.5％)であり、過去30年間を見ても緑被率は減少しているという。ヒートアイランド現象や夏季の高温化、自然への接触機会の減少が問題となっており、名古屋市も「TEAM GREEN」活動などで緑地化の活動を推進している。
この課題に対し善行寺では、「桜堂」の設計に際して、絵師による唯一無二の「桜」の意匠を採用。納骨堂の中で手を合わせる際に、自然に意識を向けるきっかけとなる空間を目指した。この桜が満開の納骨壇に納骨する際に納められたお布施の一部が、愛知県の自然環境保護団体(都市緑化、森林再生等)に寄付される。
また、近年家族の一員としてペットを弔うニーズが高まるなか、「桜堂」では契約者に限り、ペットの遺骨も境内の専用墓所へ納骨可能な仕組みを導入。このペット供養に関するお布施の一部が、愛知県内の動物福祉団体(保護活動団体など)に寄付される。
「桜堂」には1人から大家族まで利用できる4つの壇が用意されており、全て桜の種類や壇の造りが異なる。さらに、参拝のしやすさ・永続的な管理までを考慮し、すべてオーダーメイドで設計された納骨堂となっている。
契約継承者を“血縁に限定しない”制度
善行寺では、少子高齢化や家族形態の変化に応じ、納骨堂の契約継承者を“血縁に限定しない”制度を採用している。寺院が認めた人であれば、内縁関係・LGBTQパートナー・友人など、亡き人を偲ぶ意思のあるすべての人が継承可能で、これは、弔いの権利を閉じないことで、弔いの文化をつなぐことを目指した制度設計となっている。
「社会還元型納骨堂」運用開始に対する思い
善行寺の住職は、今回の「社会還元型納骨堂」運用開始に対する思いを、以下のようにコメントしている。
「寺院は昔から、“おたがいさま”“おかげさま”で成り立ってきました。今回の試みは、仏教の原点に立ち返って、いのちを尊び、自然と共に生きる。そんな弔いの場を社会へ開いていくことを目指したものです。亡き人を偲ぶと同時に、残された私たちがどう生きるかを、そっと問いかける寺院であり、納骨堂でありたいと願っています」
また、「社会還元型納骨堂」の制度設計・支援に携わったせいざんは、以下のようにコメントしている。
「私たちはこれまで全国の寺院と共に、弔いとは何か、仏教とは社会にどう関わるべきかを問い続けてきました。善行寺様との今回の取り組みは、“弔い＝社会的な行為・文化”という思想を、制度として形にした挑戦です。弔いの場が、家族や故人だけのもの、寺院の収益目的だけのものと思われている側面もありますが、弔いは社会福祉的寺業であり、地域や環境やいのちに通じていく入口だと私達は考えています。そして、弔いの権利や祈る場所が閉じられないものであること。その価値観を実現する仕組みが、一つの寺院から始まったことを、私たちは大きな一歩だと考えています」
お布施の一部が地域課題解決のための活動に寄付される、善行寺の「社会還元型納骨堂」に注目してみては。
■安井山 善行寺
住所：愛知県名古屋市中川区愛知町41−19
HP：https://zengyoji.or.jp
せいざん公式サイト：https://www.sei-zan.net
(yukari)
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