【宮城県仙台市】震災で全村避難を強いられた福島県葛尾村。村に短期滞在したアーティストの作品を展示

葛力創造舎(かつりょくそうぞうしゃ)内のアートプロジェクト実施チーム「Katsurao Collective」は、10月2日(木)～5日(日)の期間の9:30～20:30(最終日のみ18:00まで)、せんだいメディアテーク1階のオープンスクエアにて、アーティスト滞在プログラム「Katsurao AIR」で生まれた作品の展示企画「AFTER THE NEW ORDER」を、入場無料で開催する。

葛尾村に滞在したアーティストの作品を展示
アーティスト＆作品の紹介

葛尾村に滞在したアーティストの作品を展示

「Katsurao Collective」は、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故の影響により、一時的に全村民が村外への避難を余儀なくされた福島県葛尾(かつらお)村を舞台に、創造力を基点とした地域コミュニティの創出、関係人口および移住者の増加を目指すプロジェクト。

「Katsurao AIR」は、アーティストやクリエイターを短期移住者として地域に迎え入れ、滞在中の活動をサポートすることによって、地域資源の発掘・発信および関係人口の創出を目指すアーティスト滞在プログラムだ。

「AFTER THE NEW ORDER」では、気鋭のアーティストたちが葛尾村に短期移住を行い、暮らしながら制作した映像作品や写真作品を通して、現代社会を生きる鑑賞者に深い洞察を与える。

出展するアーティストは、プログラムを通して村に滞在する中で、一見すると元通りの生活を取り戻しているように見える地域の中にある複雑な現状に向き合った。

この事業は、葛尾村より「令和7年度葛尾村アーティスト移住・定住促進事業」を葛力創造舎が受託し実施している。

アーティスト＆作品の紹介

赤坂有芽氏は、2009年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。映像作品『土着［Vernacular]のための習作』(4分50秒)を出展する。赤坂氏は村でのフィールドワークを通じて、村民から語ってもらった村の歴史や慣習、行事、個人的な思い出などを集めた。村におとずれて感じた微かな違和感を、「滅多に開かなくなった本の集積のイメージ」に重ねている。

阿部浩之氏は1985年栃木県生まれ、武蔵野美術大学大学院修了。映像作品『window, our wind』(18分20秒)を出展する。阿部氏は、地域にかつて生きた人や現在に伝えられる物を現在から読み解きなおし、その物と言葉との関係を再び立ち上げることを目指している。近年では、今を生きる人と過去に生きた人とをつなぐリンクを探りながら、言葉と物が交わる領域に注目して作品を制作している。

斎藤英理氏は1991年福島県生まれ、東京都在住。映像作品『新しい木を探す』(17分10秒)を出展する。斎藤氏の作品は、滞在中の村内で、夜間に運ばれる巨大なブレードを目にしたことをきっかけに制作したエッセイフィルム。風力発電施設の建設によって変わりゆく風景を記録しながら、自身の不安や過去の記憶と重ね合わせた。その土地に生じる変化と、復興の過程で生まれる時間感覚のずれに着目している。

永井文仁氏は、2004年大阪芸術大学写真学科卒。写真作品『ひかりをすくう -Drawing the Light of Katsurao-』『HIYAMA20241012』を出展する。永井氏は、トラックの荷台をカメラに改造し、村の光を直接大判印画紙に写しとった。その技法から得られる無限の解像度を通して、全村避難で5年間もの間人がいなくなった村の風景の中の違和感を切り取った。

橋本次郎氏は、サウンド・レーベル/プロジェクト「ZEIT」(ツァイト)主宰。映像作品『Katsurao Song/村のうた』(7分16秒)を出展する。橋本氏の作品は、その地の風土を背景とした象徴的な音を組み合わせている。村の豊かな自然の音に加え、葛尾三匹獅子舞や宝財踊りといったその地の文化を象徴する音を拾いながら、ひとつの「うた」として再構成している。

山口諒氏は、2020年東京藝術大学大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻修了。映像作品『かさなること/かご馬についてのリサーチ』(8分20秒)を出展する。葛尾村には、顔に墨を用いて化粧をした男児が練り歩く「かご馬(籠馬)」という行事があった。山口氏は、この化粧を描くことで行事を追体験しようとした。